マンナンは、マンノースを主な構成成分とする多糖類の総称です。広義的な意味でのマンナンは、マンノース以外の単糖を含むガラクトマンナン又はグルコマンナンをも含んでいます。グルコマンナンは、植物分類上サトイモ科に属するAMORPHOPHALLUS KONJAC、K KOCHの塊茎(芋)に含まれるグルコマンナン(貯蔵性多糖類)から分離して得られる多糖類です。
その化学的構造は、D-グルコースとD-マンノースがほぼ1.0:1.6の割合で、β-1,4結合した複合多糖類です。一般に分子量は、約100万以上(重合度;約6200)で、分子の長さはRG=1300Å程度です。マンナンの特性はその溶解性にあり、一般的に高粘度を示します。1%溶液中における粘性は100000mPa・s以上といわれています。
オリゴ糖は、単糖が複数個結合したもので、多糖に対して少糖ともいわれ、構成単糖の数が、通常二~数十のものを示します。オリゴ糖は、甘味性、保湿性、ビフィズス菌増殖性など種々な生理活性を有するため、機能性食品素材として注目されています。
現在商品化されているオリゴ糖には、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖などがあります。そして、これらのオリゴ糖類については、大豆オリゴ糖以外は、主として原料に酵素を作用させることによって製造されています。(1)
マンナンオリゴ糖は胃や小腸の消化酵素では分解されず、大腸にそのまま到達し、消化・吸収されないことにより、ダイエット食品としての機能を持っています。近年、D-マンノースがβ-1,4結合した化合物であるβ-1,4-マンノビオースなどのβ-1,4-マンノオリゴ糖の持つ生理機能が注目されており、家畜の有害菌汚染防止物質としても知られるようになりました。(2)
またヒト糖タンパク質の糖鎖の重要な部分構造にマンノオリゴ糖が含まれており、飲食品原料としてのみならず、医薬品の原料としての応用も期待されています。(3)(4)
マンナンオリゴ糖の機能性
マンナンオリゴ糖の機能性については下記にあるように多岐にわたっています。
(i)特開平5-246860 大腸ガン予防 森永乳業(株)
(ii)特開2008-22778 糖尿病予防 味の素ゼネラルフーズ(株)
(iii)特開2009-275047 体内脂肪低減作用 味の素ゼネラルフーズ(株)
(iv)特開2006-169256 血清脂肪改善 味の素ゼネラルフーズ(株)
(v)特開2002-262828 過酸化脂質上昇抑制 味の素ゼネラルフーズ(株)
(vi)特開2006-199706 ミネラル吸収促進 味の素ゼネラルフーズ(株)
特に注目している特許は、(i)の大腸がん予防です。この特許には「グルコマンナンの平均分子量が2,000から5,000」と記載されています。天然多糖類の機能性の議論の多くは、原料のままか、原料から抽出、精製をした程度で特に加水分解による低分子量化は行わず、高分子のままでした。しかし、この特許では原料の数百万程度の高分子を加水分解して得られる数千程度の分子量と特定しています。この分子量と生理活性を結び付けるいわゆる今日での分子量活性相関の先駆けをなす記念すべき特許化と思います。
特許(ii)~(vi)まではいずれもコーヒー由来のマンナンオリゴ糖を用いる機能性評価に関するものです。(ii)の糖尿病予防では、糖尿病または糖尿病性合併症の治療、予防、または改善用飲料の機能性食品に関するものです。通常のコーヒーにもマンナンオリゴ糖が含まれていますが、その量は0.1g以下でといわれています。本特許によれば、ラットを用いた実験では、少なくても通常含有量の10倍程度が必要であることが示されています。
(iii)の体内脂肪低減効果では、日本肥満学会の肥満基準に従って選ばれた成人を対象として実験を行ったもので、マンナンオリゴ糖投与量は、3g/一日で効果があるとのことです。血清脂肪改善剤や過酸化脂質上昇抑制剤などの場合には、0.5g/一日で効果があると示されています。
珈琲由来のマンナンオリゴ糖の製造方法は、加熱熱水分解法、酸分解法、酵素分解法等が挙げられますが、味の素ゼネラルフーズ(株)の場合は、加熱熱水分解法です。加水分解温度は201℃ですから、かなり高温状態での加水分解反応といえます。
(1)特開2004-254646 マンナンオリゴ糖類の製造方法 学校法人明治大学
(2)特開平8-38064 有害細菌の感染を予防する飼料 明治製菓(株)
(3)特開昭58-212780 オリゴ糖を摂取することによるビフイドバクテリウム増殖方法 味の素ゼネラルフーズ(株)
(4)特開平8-9989 β-マンノシルオリゴ糖の製造方法 明治乳業(株)