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海藻類の中で、紅藻は江戸時代から寒天に加工されてきました。寒天は和菓子等の食品における利用を初めとして、工業用、医療用、化粧品用及び試薬用(細菌培地、組織培養)等、様々な用途で使用(1)されています。

近年、寒天オリゴ糖の様々な生理機能が明らかとなり、該寒天オリゴ糖(アガロオリゴ糖)を有効成分として含有する医薬品や機能性飲食品等が市場に数多く見受けられます。

寒天は、テングサ、オゴノリなどの紅藻類を熱水抽出し、冷却凝固させ凍結後、寒い冬の日に凍結状態のまま天日乾燥させて作られます。寒天の成分は、ガラクトースを基本骨格とする多糖類からなり、アガロースとアガロペクチンに分類され、その比率は約7:3となります。(2)(3)

寒天の主成分であるアガロースは、D-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースとが交互にα-1,3結合、β-1,4結合を繰り返してなる多糖です。(4)また、アガロペクチンは、寒天中のアガロース以外のイオン性の多糖類が全て含まれていると考えられ、構造は、アガロースに硫酸、硫酸ピルビン酸糖がエステル結合したものです。(5)

寒天由来のオリゴ糖は、アガロースを加水分解することによって製造できますが、いずれも重合度は二糖単位の偶数を示します。アガロース中のα-1,3結合を切断して得られるオリゴ糖は、アガロオリゴ糖と呼ばれ、還元末端は3,6‐アンヒドロ‐L‐ガラクトースです。一方、β-1,4結合を切断して得られるオリゴ糖は、ネオアガロオリゴ糖と呼ばれ、その還元末端はD‐ガラクトースです。

寒天オリゴ糖の生理作用

アガロオリゴ糖の機能性として、アポトーシス誘発作用、制ガン作用、各種の抗酸化作用、免疫調節作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用、α-グルコシダーゼ阻害作用等があります。アガロオリゴ糖を有効成分として含有する医薬品や機能性飲食品の提供も可能です。(6)

一方、ネオアガロオリゴ糖については、化粧料に用いることにより使用感が改善されることが報告(7)されています。デンプン老化防止作用が強く、加熱処理により静菌作用を生じることや、低カロリー性等の面から食品分野で高機能性食品の原料として有用です。(8)ネオアガロビオースは他のネオアガロオリゴ糖成分と異なり、高い保湿性と美白作用を兼ね備え、化粧品素材として有用であることが報告(9)されている。

アガロオリゴ糖製造での従来方法

従来、寒天の主成分であるアガロースの加水分解による寒天オリゴ糖の製造には、酸加水分解法と酵素加水分解法が用いられてきました。酸加水分解法の場合には主にα-1,3結合が切断されるため、アガロビオースを構成成分とするアガロオリゴ糖が生成します。用いる酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、クエン酸、乳酸等の有機酸がありますが、特に塩酸が良好となります。(10)問題点としては、生産されるオリゴ糖の大きさを制御することが難しく、特に重合度の低い低分子オリゴ糖を選択的に作ることが極めて難しいことなどが挙げられます。

酵素加水分解法の場合にはアガロースを分解する酵素として、α-1,3結合を切断するα-アガラーゼ、ならびにβ-1,4結合を切断するβ-アガラーゼの2種が知られています。α-アガラーゼではα-1,3結合が切断されるため、アガロビオースを構成成分とするアガロオリゴ糖が生成します。

α-アガラーゼは、海洋性のグラム陰性細菌GJ1B株やビブリオ属細菌の生産する酵素があります。しかしながら、アルテロモナス・アガリリティクスGJ1B株由来のα-アガラーゼは、オリゴ糖でも6糖以下を分解することができないため、生理活性が顕著なアガロビオースを生産することは不可能です。

さらにビブリオ属細菌由来のα-アガラーゼは逆に、6糖以下のオリゴ糖にのみ活性を示す酵素であり、アガロースに対してはまったく作用しないために、アガロースを原料とするアガロオリゴ糖の製造に使用することはできません。11)

β-アガラーゼではβ-1,4結合を特異的に切断するため、ネオアガロビオースを構成成分とするネオアガロオリゴ糖を生成します。β-アガラーゼは、ビブリオ属が有するβ- アガラーゼ遺伝子の利用、アルテロモナス・エスピー E-1株を用いた製造方法が報告されています。

しかしながら、ビブリオ属が有するβ- アガラーゼの特異性は、例えば、ネオアガロヘキサオース(6糖)やネオアガロテトラオース(4糖)等の低分子のものにおいて低く、生成物は必ず2 種以上のネオアガロオリゴ糖の混合物としてのみ得られてしまうという欠点があります。

また、アルテロモナス・エスピー E-1株を用いた製造方法においては、培養条件等を改良しても生産量に限りがあり、未だ工業生産レベルへ増加させるまでには至っていません。(12)

(1)特開2009-102279 株式会社コーセー 抗シワ剤およびシワ形成防止用皮膚外用剤
(2)特開2007-154117 伊那食品工業株式会社 機能性寒天、並びにそれが含まれた食品、医薬品、化粧品及び飼料
(3)特開2005-229889 株式会社コーセー ネオアガロビオース生産酵素をコードするポリヌクレオチドおよびその利用
(4)特開2001-275685 寶酒造株式会社 α-アガラーゼおよびその製造方法
(5)特開2005-192492 独立行政法人海洋研究開発機構 寒天分解酵素およびその利用
(6)特開2008-220378 タカラバイオ株式会社 アガラーゼおよびその遺伝子
(7)特開2009-102279 株式会社コーセー 抗シワ剤およびシワ形成防止用皮膚外用剤
(8)特開2005-192492 独立行政法人海洋研究開発機構 寒天分解酵素およびその利用
(9)特開2005-229889 株式会社コーセー ネオアガロビオース生産酵素をコードするポリヌクレオチドおよびその利用
(10)特開2004-149471 白鳥製薬株式会社 血糖低下剤
(11)特開2008-220378タカラバイオ株式会社 アガラーゼおよびその遺伝子
(12)特開2005-229889 株式会社コーセー ネオアガロビオース生産酵素をコードするポリヌクレオチドおよびその利用